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総合女性史学会 声明

総合女性史学会 声明 published on

 ※総合女性史学会が下記の声明を公表されました。総合女性史学会から依頼がありましたので、本会のサイトに掲載いたします。

 

《声明》 「選択的夫婦別姓(氏)」の実現をめざして

 2015年12月16日、最高裁判所大法廷において、長年の懸案であった「夫婦別姓(氏)訴訟」の判決があり、現行民法750条(夫婦同氏)を合憲とする判決が下され、原告側の敗訴が確定した。
 15人の裁判官(男性12人・女性3人)のうち、違憲と判断したのは女性裁判官全員を含む5人であった。夫婦同姓支持は、「家族の呼称を一つにする合理性がある」、「女性の不利益は通称使用で緩和できる」という理由であり、最高裁は司法としての人権問題への判断を避け、立法府の責務として国会に法整備を転嫁した。
 今回の訴訟は、憲法13条(個人の尊厳)・14条(法の下の平等)・24条(男女の本質的平等)の違反、また、1976年に国連で採択され、85年に日本も批准した女性差別撤廃条約(16条第1項:婚姻、家族関係に関わる全ての事項について女性に対する差別の撤廃。完全な合意のみによる婚姻の権利。夫および妻の同一の個人的権利〔姓および職業を選択する権利〕)にも抵触するという内容である。
夫婦同姓の法的義務は、現在、世界でも日本ただ一国が施行しており、この件に関し、日本政府は国連女性差別撤廃委員会から再三の改正勧告を受けている。
「家族の呼称を一つにする合理性」は、海外諸国の事例を含めて立証されなければならない。

 夫婦同姓は日本の伝統的慣習であるという見解に対し、歴史学研究の立場から述べれば、婚姻後の夫婦同氏(姓)制度は、家制度を法制化した1898年の明治民法によってはじめて施行されたものである。古代・中世の時代は夫婦別姓であり、近世は夫婦別姓を基本に、姓とは別に苗字については夫婦別苗字・同苗字の混在期であり、制度化はされていなかった。
 歴史的経緯を辿れば、我が国においては夫婦別姓の時代が圧倒的に長期間であった。敗戦後の1947年の民法改正によって家制度は廃止されたが、「夫婦同氏」の条項は依然として残された。男性優位が浸透する社会で、婚姻後に夫の姓を選択する妻は、現在全体の96パーセントに及んでいる。これを原告側は間接差別としている。
 また、改姓による社会的不合理や自己のアイデンティティの不一致など心情的な被害を受ける女性も多く、個人や夫婦の望まぬ改姓は、国民全般への大きな足枷となっている。また同時に、「夫婦同氏」の強制は男女双方に圧力をかけて「法律婚」の妨げを助長している。
「選択的夫婦別姓(氏)」は家族の多様性を許容し、個人の尊重の上に立つ制度である。個々の人格権は決して侵害されてはならない。
現行の民法750条を早急に改正し、「選択的夫婦別姓(氏)」の実現を国会に強く要請するものである。
                 
 2017年3月                      

 総合女性史学会