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大阪人権博物館・大阪国際平和センターの補助金削減・廃止に反対する声明

大阪人権博物館・大阪国際平和センターの補助金削減・廃止に反対する声明

先日、橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事は、大阪人権博物館(リバティおおさか)を見学し、展示内容への不満足から補助金を打ち切ることを表明した。また、大阪国際平和センター(ピースおおさか)については、二〇一一年に橋下府知事(当時)がその展示内容を問題とし、現在は大阪府市統合本部の特別顧問のもとで補助金支出の見直しが俎上に載せられている。しかしながら、両施設がこれまでに果たしてきた社会的役割は極めて大きく、私たちは大阪府・市の方針に賛成することはできない。

リバティおおさかは、さまざまな人権問題に関する歴史的調査研究、関係資料の収集・公開による人権意識の啓発を目的とした施設である。大阪という地域に根ざした問題を掘り下げる一方、近年では沖縄問題、性差別など様々な人権問題についても幅広く発信している。
またピースおおさかは、次代を担う世代に戦争の悲惨さと平和の尊さを伝えるために設立され、精力的な資料の収集により現在収蔵品総点数は四万点を超えている。これをもとに、大阪の空襲被害をテーマとした展示や、平和を祈念する企画事業などを行うことで、大阪府民・市民は勿論、中国や韓国など東アジアの人びとからも大きな共感を得、支えられてきた。

両施設とも、以上のような趣旨・目的に則って、資料を収集・保存し、その成果を展示や刊行物に結実させるとともに、地元学校や社会教育との連携など地域に根ざした活動や、普遍的な設立理念の共有のために国際交流を積み重ねてきた。人権の尊重と平和の実現を目指した両施設における研究・普及活動や国際交流の蓄積は、大阪のみならず、日本そして世界からも高く評価され支持されてきたものである。こうした積み重ねは今後、大阪府民・市民が東アジアの人びとと交流を深めていく上での信頼や相互理解の基盤となることは間違いない。
両施設がこれまで果たしてきた社会的・公的役割に鑑みれば、府知事や市長の個人的な価値判断によって事業の縮小が決定されることには、到底賛同できない。

その一方で、本年五月二九日の第一二回大阪府市統合本部会議において、「近現代史の教育のための施設」の設立方針が決定されている。提案者の橋下市長によれば、同施設は次世代を担う子どもたちが、国際社会における日本の位置を理解できるように日本の近現代史を学ぶ教育施設であり、その展示内容は、対立する歴史的見解を「両論併記」したものにするという。
私たちは、一方で既に十分な実績を有するリバティ・ピース両館の事業縮小・廃止を検討しながら、他方で府知事と市長の価値基準を軸とした新たな近現代史教育施設の設立計画が進められていることに、強い懸念を抱いている。

以上の理由から、私たちは大阪府・市に、次の点を要望する。

  • 一、大阪人権博物館(リバティおおさか)および大阪国際平和センター(ピースおおさか)への補助金打ち切り等の方針を撤回すること。
  • 一、大阪人権博物館および大阪国際平和センターのこれまでの取り組みを尊重し、今後も事業の継続・拡充に努めること。

 

上記、声明する。

二〇一二年六月二六日

日本史研究会
歴史学研究会
歴史科学協議会
歴史教育者協議会