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歴史学入門講座

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歴史学入門講座   

テーマ:新たな視点を拓く―歴史学研究のこれから―

日 時:6月3日(土)午後1時~午後5時

場 所:京都大学吉田キャンパス本部構内文学部新館2階第7講義室

   (京都市左京区吉田本町 市バス「京大正門前」または「百万遍」下車)

講 師:笠谷和比古氏(国際日本文化研究センター名誉教授)

    「歴史学的方法の基準について」

    藤野裕子氏(東京女子大学准教授)  

    「民衆史研究という挑戦―語らない人びとの歴史にせまる―」           

参加費:500円 

懇親会もご用意しております。予約不要。ぜひご参加ください。

千葉県文書館収蔵公文書の不適切な大量廃棄・移動の停止を求める要望書

千葉県文書館収蔵公文書の不適切な大量廃棄・移動の停止を求める要望書 published on

千葉県知事
鈴木 栄治 様

千葉県文書館収蔵公文書の不適切な大量廃棄・移動の停止を求める要望書

 千葉県文書館( 以下「文書館」といいます) では、2 0 1 5 年度中に収蔵公文書1 3 ,039 冊が減少しました。このうち、1 0 , 1 7 7 冊が廃棄され、2 , 8 6 2 冊が貴県政策法務課の書庫に移されています。貴県の公文書の廃棄は、県の歴史・文化を探求しようとする県民や歴史研究者の活動を著しく阻害する行為であることはもちろん、県政を検証するための重要な手がかりである公文書を県民から奪ったことにもなります。移動された公文書についても、簡便な手続きで文書館にて閲覧可能であったものが、情報開示請求の対象となり、利用の壁が従来と比較して大幅に高くなりました。

 この件について、日本アーカイブズ学会から貴県への質問に対する回答、情報開示請求によって交付された廃棄・移動公文書リスト及び文書館が毎年作成している『事業概要』等から以下の経緯が判明しました。

 貴県では、2 0 1 1 年4 月の「公文書等の管理に関する法律」( 以下、「公文書管理法」という) の施行を受けて、「千葉県行政文書管理規則」及び「千葉県行政文書管理規則の運用について」が改正され、2 0 1 5 年度から運用が始まりました。この規則改正で、「長期」( 実質、永年保存) とされていた公文書の保存期限の区分が廃止され、上限が3 0 年保存とされました。これにより、従来文書館で一括して保存されてきた「長期」保存文書のうち完結後3 0 年を経過しているものは、すべて上記の規則改正と併せて制定された「歴史公文書の判断に関する要綱」に基づき遡及して評価・選別の対象とされました。また、有期限保存文書であっても歴史的に重要と判断され、文書館に移管されてきたものも同様に対象とされています。その結果、1 万点以上にものぼる文書館収蔵公文書が廃棄と判定され、現在の職務遂行に必要だとの判断から2 , 8 6 2 冊が政策法務課の書庫に移動されました。この間、規則改正にともなう形式的なパブリック・コメントが行われたのみで県民・利用者に対する説明は十分に行われませんでした。『事業概要』で数値の推移のみ開示されているものの、県民・利用者へは廃棄・移動された公文書の内容に関する情報さえ提供されていません。

 以上のように大量の公文書が廃棄・移動され、2 0 1 5 年3 月までは文書館でだれでも閲覧請求することが可能であったものが、現在はできなくなりました。何らかの理由で収蔵公文書を再び評価・選別する場合であっても、実施に当たっては慎重な議論・手続や県民への丁寧な説明が必須です。それが行われなかったばかりか、恩給裁定原義や遺族台帳等の第二次世界大戦に関連する公文書や県にとって一大行事であった1 9 7 3 年の国民体育大会に関する簿冊等の明らかに歴史的に重要な公文書がすでに廃棄されています。また、政策法務課の書庫に移動された明治期の人事記録等が、現在の業務において日常的に必要なものなのか、はなはだ疑問です。

 前掲『事業概要』によれば、2 0 1 5 年度までに再評価・選別された文書館収蔵公文書は約2 5 パーセントであり、残りの約7 5 パーセントは現在も判定作業が進められています。さらなる公文書の不適切な廃棄・移動が行われる可能性が、極めて高いのが現状です。わたしたちアーカイブズ学、考古学、歴史学並びに千葉県の歴史研究に携わる者は、文書館や関係当局が、公文書の管理・利用に対する認識を大きく改め、現在進めている不適切な評価・選別による廃棄・移動を停止し、県の公文書管理のあり方を見直すことを強く要望します。

2 0 1 7 年2 月2 1日

アーカイブズ学・考古学・歴史学関係1 4団体
日本歴史学協会 関東近世史研究会 首都圏形成史研究会 千葉歴史学会
千葉歴史・自然資料救済ネットワーク 地方史研究協議会 日本アーカイブズ学会
 日本史研究会 日本考古学協会 東アジア近代史学会 明治維新史学会
歴史科学協議会 歴史学研究会 歴史教育者協議会

第6回 歴史から現在を考える集い

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 〈嘆き〉と〈怒り〉:「核」と「平和」の戦後日本文化史

講師 山本昭宏 氏(神戸市外国語大学准教授)

 

 昨年、米国大統領の広島訪問や日印原子力協定の調印など、日本では「核」と「平和」の関係について再考を迫る重要な出来事が次々と起こりました。また、原発事故後における国内の原子力発電を巡っても様々な問題が生じています。しかし、これら一連の事象について、依然、国内では十分な議論が行われているとは言えません。こうした状況を克服するためには、日本における「核」を巡る歴史への考察が欠かせません。

 そこで今回は近現代文化史を専門とされている山本昭宏氏を講師にお迎えし、映画や小説・マンガなどの分析を通じ、戦後日本において「核」がいかなる形で認識・受容されたのかについてご講演いただきます。

 

日時:2月25日(土) 15:00~17:00

会場:平安女学院大学京都キャンパス室町館4階412教室(京都市上京区下立売通烏丸西入五町目町 市営地下鉄烏丸線丸太町駅下車、徒歩5分)

入場無料、一般来聴歓迎

お問い合わせ  日本史研究会 075-(256)-9211

第33回 平安京・京都研究集会

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「京都」の奈良時代-山城が山背だったころ-

日時 12月18日(日)13時~17時
会場 機関紙会館5階大会議室
   (京都市上京区新町通丸太町上ル東側)
   地下鉄烏丸線丸太町駅2番出口より西へ3筋目を北へ

報告
毛利 憲一氏(平安女学院大学 日本古代史)
  「山背北部地域の奈良時代」
堀 大輔氏(京都市文化財保護課 考古学)
  「遺跡から見た奈良時代の京都」
佐々木 尚子氏(京都府立大学 植生史)
  「京都周辺地域の植生変化と人間活動
     ―花粉分析から見た奈良・平安時代―」

司会  上杉 和央氏(京都府立大学 歴史地理学)
     山本 雅和氏(京都市埋蔵文化財研究所 日本考古学)

主催 平安京・京都研究集会
後援 日本史研究会

※参加自由。要資料代。

鎌倉市円覚寺結界遺構の保存を求める声明

鎌倉市円覚寺結界遺構の保存を求める声明 published on

 私たちは鎌倉市が計画している円覚寺西側結界遺構の削平工事に強く反対します。

 JR横須賀線北鎌倉駅下り線ホームに北から伸びた岩塊は、鎌倉を代表する寺院の一つ円覚寺の寺域範囲を示す西側結界遺構であります。円覚寺境内は国指定史跡であり、現在、結界遺構は、指定範囲外とはなっていますが、寺域の重要な構成要素であることは疑う余地がありません。

 この結界遺構は、国重要文化財「円覚寺境内絵図」(建武年間)にも明確に描かれている重要遺構です。さらに遡れば、この遺構は、円覚寺創建以前に鎌倉幕府第三代執権北条泰時がおこなった境界祭祀の隣接地であることから、中世鎌倉そのものの西側境界であった可能性すらあります。まさしくこれは、中世鎌倉の景観を今に伝えるきわめて重要な歴史遺産であります。

 冒頭述べたようにこの結界遺構に対して、削平計画が進められています。鎌倉市は遺構を削平する根拠として、明治期の鉄道建設で遺構は損傷しており価値が損なわれているという見解をあげています。これは結界遺構が往時の様相を良好な形で保っているという厳然たる事実に眼をそむけるもので、理解に苦しみます。また、最近になって中世史研究者による地形図の詳細な検討の結果、損傷を受けていないことが新たに提起されてもいます。こうした懸念がある以上、国指定史跡の重要な構成要素である結界遺構の破壊につながる行為は、慎重に検討されるべきと思量します。

 荒々しい岩盤の造形で表現された谷戸の中に神社仏閣がおさまり、山裾に中世墳墓窟のやぐらが開口するという風景こそ、中世以来の鎌倉の特色と言っていいでしょう。円覚寺結界遺構はそのような中世鎌倉の景観をよく伝えるものであり、これを保全し、町づくりの中に活かしていくことが、今、私たちに強く求められていると考えます。

 鎌倉市は、この計画の無謀さを認識し、賢明な判断を下すことを求めます。

                                                以上

 

 2016年9月1日

日本歴史学協会

戦国史研究会

東京歴史科学研究会

地方史研究協議会

日本史研究会

日本風俗史学会

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会

文化財保存全国協議会

歴史科学協議会

歴史学研究会

歴史教育者協議会

                                       

 

歴史学入門講座

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テーマ「「社会」への視座―個人と集団―」

講師 杉森哲也氏(放送大学)「近世の都市社会史と京都」
  一ノ瀬俊也氏(埼玉大学)「軍事史・戦争史研究の課題と反省」

日時:7月10日(日)13:00~17:00
場所:機関紙会館5階大会議室
(京都市上京区新町通り丸太町上る東側
地下鉄丸太町駅下車2番出口より西へ徒歩5分または市バス府庁前下車すぐ)
   
※参加費500円
※懇親会もご用意しております。ぜひご参加ください。

歴史学入門講座 公開勉強会

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日時:6月12日(日)18:00~
場所:機関紙会館2階会議室

   

本年度の歴史学入門講座(京都)は、7月10日(日)機関紙会館5階大会議室にて杉森哲也氏・一ノ瀬俊也氏を講師にお招きして開催します。
入門講座に先立ち公開勉強会を行います。講座に関わる論文を数本取り上げる予定です。いずれもお気軽にご参加ください。

日本軍「慰安婦」問題をめぐる最近の動きに対する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明

日本軍「慰安婦」問題をめぐる最近の動きに対する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 published on

わたしたち日本の歴史学会・歴史教育者団体は、日本軍「慰安婦」問題(以下、「慰安婦」問題)をめぐって、2015年5月に「「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」を発表した。 だがその後、12月28日の日韓外相会談後におこなわれた共同記者発表(以下、日韓合意)と、2016年1月20日に言い渡された、吉見義明氏の名誉毀損をめぐる裁判(以下、吉見裁判)における原告敗訴の判決という、ふたつの大きな動きがあった。それらに対して、わたしたちは、以下の問題を指摘する。

今回の日韓合意は、第一に、「慰安婦」制度の責任を曖昧にしている。歴史研究は、日本政府・日本軍が軍の施設として「慰安所」を立案・設置・管理・統制したこと、「慰安婦」制度の本質は性奴隷制度であったこと、当時の国内法・国際法に違反していたことを明らかにしてきた。合意はそれらを踏まえておらず、「慰安婦」制度の責任については「軍の関与」という曖昧な認定にとどまっている。第二に、元「慰安婦」の方々の名誉や尊厳という人権に深く関わる問題について、当事者を置き去りにしたまま、決着をはかろうとしている。今回の合意で「慰安婦」問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」し、国際社会において「互いに非難・批判することを控え」るとの表現によって、今後、歴史研究の進展にともなう新たな評価と問題解決の可能性が失われるのは不適切である。加えて、合意は歴史教育に言及しておらず、実際に教科書から「慰安婦」問題に関する叙述が削られる事態が進行している。教育によって歴史的事実を伝えていくことを、あらためて求める。日韓合意には、総じて当事者の思いや意思を顧みようとする姿勢がみられない。こうした、政府間で一方的に「解決」を宣言し、以降の議論を封殺するかのごとき手法では、「慰安婦」問題の抜本的な解決はありえない。

一方、吉見裁判の判決文において、東京地方裁判所は、2013年5月に桜内文城衆議院議員(当時)が吉見義明氏の著書をめぐって「捏造」と発言したことを、「名誉毀損に該当する」と認定しながら、「意見ないし論評の域を逸脱したもの」とはいえないとして免責し、原告の請求を棄却した。「捏造」とは、おもな辞書によれば、「事実でないことを事実のようにこしらえ」る意であり、判決は、実証という手続きをかさね、学界で広く受け入れられてきた研究成果を、「捏造」と公言することの重大さを理解していない。研究者にとって、自らの研究成果が「捏造」と評されることは、研究者生命に直接関わる問題である。そうした事情を斟酌することのない発言と、それを容認するかのごとき不当な判決を、見過ごすことはできない。

ふたつの動きは、問題の重要性を軽んじ、当事者を置き去りにしたまま、きわめて強引に「慰安婦」問題の幕引きをはかろうとする点で共通している。日韓両政府の関係者および日本の司法関係者が、「慰安婦」問題と真摯に向きあい、その真に根本的な解決にむけて取り組むことを求める。

 

                          2016年5月30日

歴史学関係15団体

日本歴史学協会

大阪歴史科学協議会

大阪歴史学会

ジェンダー史学会

専修大学歴史学会

総合女性史学会

千葉歴史学会

東京歴史科学研究会

名古屋歴史科学研究会

日本史研究会

日本史攷究会

日本思想史研究会(京都)

歴史科学協議会

歴史学研究会

歴史教育者協議会

 

 

Joint Statement by Associations of History Scholars and Educators in Japan on Recent Developments in the Japanese Military’s “Comfort Women” Issue

 

In May 2015, a national network of Japanese historians and history educators published a joint statement regarding the Japanese Army’s “comfort women” issue.[1] Since the statement’s publication there have been two major developments.        First, the Japanese and South Korean governments published a joint declaration about the “comfort women” issue following a December 28, 2015 conference between the two nations’ foreign ministers   (hereafter, “the Japan-Korea Agreement”). Second, on January 20, 2016, the Tokyo District Court dismissed Professor Yoshiaki Yoshimi’s defamation suit against former Diet representative Fumiki Sakurauchi. These two developments have raised a number of serious issues, which we wish to highlight.    

First, we believe that the Japan-Korea Agreement obscures the issue of official involvement in the “comfort women” system. Historical research has unequivocally established that the Japanese government and army proposed, established, managed, and regulated “comfort stations” at military facilities, and that the “comfort women” system was essentially a system of sexual slavery that violated existing domestic and international legal standards. Despite these facts, the Agreement fails to take heed of either point, going only so far as to vaguely acknowledge the “involvement of the Japanese military authorities.”

Second, the Japan-Korea Agreement fails to sufficiently consider the honor and dignity of former “comfort women,” which, we believe, is a human rights issue. Instead, the Agreement attempts to formally settle the issue without addressing the suffering of the victims. Specifically, the Agreement states that the “comfort women” issue is “resolved finally and irreversibly.” In addition, it mentions that both parties “will refrain from accusing or criticizing each other” in the international community. By declaring the issue formally resolved, these statements threaten to suppress subsequent historical research and any future solutions to the issue that research can provide. Moreover, the Agreement makes no reference to historical education, despite the fact that accounts of the “comfort women” issue continue to be removed from Japanese textbooks. In light of these trends, we renew our call that historical facts be properly related via education.

In short we believe that the Japan-Korea Agreement fails to sufficiently address the hopes and desires of the parties involved. Rather than representing a popularly-supported resolution that properly acknowledged the concerns of former “comfort women,” it represents an intra-governmental accord that appears designed to suppress future debate. Accordingly, we believe that the Agreement is incapable of truly and fundamentally resolving the “comfort women” issue.  

The second major development requiring mention concerns Professor Yoshiaki Yoshimi’s defamation suit against former Diet representative Fumiki Sakurauchi. Although the Tokyo District Court ruled that Sakurauchi’s May 2013 comment that Professor Yoshiaki Yoshimi’s research was “a fabrication” did in fact constitute defamation, it asserted that the comment does not “transcend the accepted limits of opinion or commentary” and ultimately denied Yoshimi’s claim. Major dictionaries define “fabrication” as the act of making something false appear true. This ruling fails to recognize the gravity and potential danger of a claim that an empirically supported and widely-accepted body of research is “a fabrication.” For researchers, a claim that one’s findings are a fabrication is something that threatens one’s career and future. Therefore, we are unable to ignore statements that fail to recognize just how serious claims of academic dishonesty truly are and judicial rulings that appear to tolerate such claims.

These two recent developments are similar in that they trivialize the significance of the “comfort women” issue, ignore the hopes and desires of the parties involved, and are designed to force an abrupt conclusion to the issue. Therefore, we request that the concerned parties in the Japanese and Korean governments, as well as members of the Japanese judiciary, have a sober and honest debate about the “comfort women” issue and work to truly resolve it.

 

May 30, 2016

 

15 associations of history scholars and educators in Japan

 

The Japanese Historical Council

Association of Historical Science

Association of History of Japanese Thought

Chiba Historical Society

The Gender History Association of Japan

The Historical Association of Senshu University

The Historical Science Society of Japan

History Educationalist Conference of Japan

The Japanese Historical Society

The Japanese Society for Historical Studies

The Osaka Association of Historical Sciences

Osaka Historical Association

The Society for Historical Science of Nagoya

The Society for Research on Women's History

Tokyo Historical Science Association

 


[1] The document was entitled A Joint Statement by Japanese Historians and History Educators on the “Comfort Women” Issue.

 

 

第5回「歴史から現在を考える集い」

第5回「歴史から現在を考える集い」 published on

第5回「歴史から現在を考える集い」

せめぎあう立憲主義の可能性−「始まりの史学」という視点から

講演者 山室 信一氏(京都大学人文科学研究所)
日 時 2月27日(土)  午後1時半〜5時
会 場 平安女学院大学京都キャンパス 室町館4階412教室
  京都市上京区下立売通烏丸西入五町目町172-2
  (市営地下鉄烏丸線丸太町駅下車、徒歩5分)
参加費 500円
主 催 日本史研究会
問合先 日本史研究会 075-(256)-9211
  一般来聴歓迎

「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明

「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明 published on

「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明


『朝日新聞』による2014年8月の記事取り消しを契機として、日本軍「慰安婦」強制連行の事実が根拠を失ったかのような言動が、一部の政治家やメディアの間に見られる。われわれ日本の歴史学会・歴史教育者団体は、こうした不当な見解に対して、以下の3つの問題を指摘する。

第一に、日本軍が「慰安婦」の強制連行に関与したことを認めた日本政府の見解表明(河野談話)は、当該記事やそのもととなった吉田清治による証言を根拠になされたものではない。したがって、記事の取り消しによって河野談話の根拠が崩れたことにはならない。強制連行された「慰安婦」の存在は、これまでに多くの史料と研究によって実証されてきた。強制連行は、たんに強引に連れ去る事例(インドネシア・スマラン、中国・山西省で確認、朝鮮半島にも多くの証言が存在)に限定されるべきではなく、本人の意思に反した連行の事例(朝鮮半島をはじめ広域で確認)も含むものと理解されるべきである。

第二に、「慰安婦」とされた女性は、性奴隷として筆舌に尽くしがたい暴力を受けた。近年の歴史研究は、動員過程の強制性のみならず、動員された女性たちが、人権を蹂躙された性奴隷の状態に置かれていたことを明らかにしている。さらに、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配・差別構造との連関も指摘されている。たとえ性売買の契約があったとしても、その背後には不平等で不公正な構造が存在したのであり、かかる政治的・社会的背景を捨象することは、問題の全体像から目を背けることに他ならない。

第三に、一部マスメディアによる、「誤報」をことさらに強調した報道によって、「慰安婦」問題と関わる大学教員とその所属機関に、辞職や講義の中止を求める脅迫などの不当な攻撃が及んでいる。これは学問の自由に対する侵害であり、断じて認めるわけにはいかない。

日本軍「慰安婦」問題に関し、事実から目をそらす無責任な態度を一部の政治家やメディアがとり続けるならば、それは日本が人権を尊重しないことを国際的に発信するに等しい。また、こうした態度が、過酷な被害に遭った日本軍性奴隷制度の被害者の尊厳を、さらに蹂躙することになる。今求められているのは、河野談話にもある、歴史研究・教育をとおして、かかる問題を記憶にとどめ、過ちをくり返さない姿勢である。

当該政治家やメディアに対し、過去の加害の事実、およびその被害者と真摯に向き合うことを、あらためて求める。

 

2015年5月25日

 

歴史学関係16団体

日本歴史学協会

大阪歴史学会

九州歴史科学研究会

専修大学歴史学会

総合女性史学会

朝鮮史研究会幹事会

東京学芸大学史学会

東京歴史科学研究会

名古屋歴史科学研究会

日本史研究会

日本史攷究会

日本思想史研究会(京都)

福島大学史学会

歴史科学協議会

歴史学研究会

歴史教育者協議会

2015年9月末日までに、新たに4団体から声明への賛同の申し出があり、賛同団体は20団体となった。以下に、追加賛同団体を列記する。

 

2015年10月10日

 

大阪歴史科学協議会

京都民科歴史部会

ジェンダー史学会

宮城歴史科学研究会