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会費改訂および会活動の改革について(提案)

会費改訂および会活動の改革について(提案) published on

総合委員会

はじめに

 会誌第七六二号に掲載しました代表委員仁木宏執筆の「日本史研究会会員のみなさんへ ―会財政の現状について―」でお知らせしましたように、本会は本年度(二〇二六年度)の活動方針に「大幅な財政赤字への対応策として、年会費の改訂を視野に入れつつ、会活動の全般的な見直し、経費削減、会員数の維持等について努力する」との項目を立てました。右の方針に基づいて本年度設置された「会費・会活動検討ワーキング・グループ」および総合委員会において会費改訂・会活動の改革等について議論を重ねてきましたので、一〇月三日の開催を予定しています本年度総会に先立って会員のみなさんへご説明・ご提案する次第です。

一、会財政・会員数の現状

 最初に近年の会財政・会員数の現状に関するいくつかのデータをお示しします(データはいずれも総務委員会作成、表の数字の単位は円ないし人)。

 二〇一六年度から二〇二五年度までの年度ごとの収支・会員数等の推移を示したのが表1です。各年度の単年度収支を見ると、二〇一七年度までは黒字基調でしたが、それ以後は赤字か、黒字であっても少額なことが分かります。それが二〇二五年度に至って大幅な赤字を計上するようになりました。この赤字の原因としては、次の二点が考えられます。

・会員数が減ったことによる会費収入の減少。この間会員数は一貫して減り続けており、その結果当然のこととして最も大きな収入源である会費の収入が大幅に減っています(この一〇年間で約二五%の減少)。

・支出の増加。コロナ禍により一時減少していた支出が、会活動の再活性化によりほぼコロナ禍以前の額に戻りました。そのなかでも印刷・発送といった会誌に関わる支出が増えています。会誌の頁数は、投稿数の減少などに見舞われた二〇二三年度は一二冊合計で一一八〇頁でしたが、二〇二五年度は一四八四頁に増加しています。この増加が印刷・発送費に影響しているといえます。また、大会についても単年度で約四六万円の赤字となっています。

 一方、一九六五年以来の年会費(正会員)の推移を示したのが表2です。本会の支出のなかで最も大きな比率を占めているのは会誌の刊行に関わる経費なので、その状況も合わせて示しました。会誌の年一二回刊行が定着して以降、本会では四年から一〇年間隔で五〇〇円から一〇〇〇円の会費値上げを継続的に行ってきましたが、二〇〇三年に八五〇〇円に改訂して以後は二三年にわたって据え置きが続いています。

 次に退会者の動向を把握するため年齢層別の退会者数を示したのが表3です。全体的に高齢者の退会が多いことは間違いありませんが、退会者数が特に多かった二〇一九・二〇二〇・二〇二五の各年度では、三〇歳代から五〇歳代のいわゆる現役世代の退会も少なくないことが分かります。

 以上のデータを踏まえ、会財政・会員数の現状および今後の方向について、私たちは次のように考えました。

・会員の減少傾向は一貫したものであり、昨今の若手研究者の減少を勘案すると新規入会者の減少(=会員数の減少)は今後も続くことが予想されること。とはいえ、減少を少しでも食い止めるため、会員であることのメリットを特に若手会員に感じてもらえるよう、従来からの若手会員制度による会費の減額に加えて、さまざまな仕組みを作っていく必要があること。

・本年度も四一五万五〇〇〇円の赤字予算を組んでおり、このままでいくと繰越金は二年間で半額となってしまうこと(1)。

・従って、今後も会活動を継続的に維持していくためには、経費削減を図ると共に会費の値上げが不可欠であること。

二、会費・会活動検討ワーキング・グループ

 前述のように、本年度の活動方針に基づいて「会費・会活動検討ワーキング・グループ」(以下「WG」と表記。)が設置されました。WGは代表委員および研究・編集・総務の各委員長を構成員とし、会費の改訂や会活動の改革等について具体的な方策を検討し、総合委員会に提案することを目的としました(2)。

 WGは次のように現在までで七回開催されました(いずれもオンライン)。

  第一回 二〇二五年一一月六日

  第二回 二〇二五年一二月一一日

  第三回 二〇二六年一月一五日

  第四回 二〇二六年二月一二日

  第五回 二〇二六年三月一八日

  第六回 二〇二六年四月一六日

  第七回 二〇二六年五月一四日

主な審議事項は次のとおりです。

・会の財政状況・会員数の動向等の把握

前述の表1~3をはじめとした各種のデータを総務委員会から提供してもらい、それらをもとに会の財政状況・会員数の動向等の把握を行いました。

・他学会等の状況調査

本会と関係が深かったり、WGの構成員が会員となっていたりする他学会等の現状について聞き取り等により調査しました。本会のような総合的な学会では会員数が減少している傾向が強い一方、個別分野に対象を特化させている学会・研究会が活性化している傾向があるように思われます。また一部の学会ではすでに会誌の全面的電子化を実施していました。一方で、大会・例会等の企画・開催、会誌月刊の体制等本会の活動が他学会と比較しても相当活発であることが改めて確認されました。

・会誌刊行経費削減および会費改訂案

(次項三で詳述)

・事務所経費・人件費の検討

支出の中で一定の割合を占める事務所経費(家賃等)および事務員人件費についても検討を行いました。前者については、現在の事務所が交通至便で家賃が相対的に安価であること、事務所を移転した場合(現状と同等の広さを確保できるとは考えづらいため)会議等の場所が別途必要になり手間と費用がかかること、等から現状のままが望ましいのではないかと結論づけました。また後者については、二名の事務員より具体的な業務内容につき報告していただき、その結果現在の会活動を維持していくためには今の体制を維持することが不可欠であると結論づけました。

・経費削減策、会員減少食い止め策

(次々項四で詳述)

三、会費改訂案

(一)会誌刊行経費削減

 会費の改訂を審議する前提としては、会の支出の四割程度を占める会誌の刊行に関わる経費の削減について検討することが必要です(参考までに二〇二五年度における会誌刊行に関わる支出は表4のとおりです)。刊行に関わる経費の削減については、WGにおける検討を経て二〇二六年一月一七日の総合委員会において審議されました。

 WGは刊行に関わる経費の削減について次の三通りのケースを想定し、それぞれにおいて削減しうる金額を総合委員会に提示しました。

 ① 現在の刊行状況(回数・媒体等)を維持する。

 ② 紙媒体を維持し、刊行回数を削減する。

 ③ 電子媒体に変換し、刊行回数を維持する。

WGでは何らかの形で現在の刊行状況を変更しないと経費の大幅な削減は見込めないと考え、当初①は想定していませんでしたが、会誌印刷を請け負っている業者より現状よりも安価な見積が提示されたため、検討する必要があると判断しました。

① 現在の刊行状況(回数・媒体等)を維持する。

 二〇二五年度に刊行された会誌各号に今回新たに提示された見積をあてはめると、その合計金額は五六八万四七〇〇円になりました。これは表4で示した印刷費(八三〇万四三二五円)と比較すると二六一万九六二五円の削減となります。

② 紙媒体を維持し、刊行回数を削減する。

 刊行回数をどれだけ削減するかについては議論があると思われますが、とりあえずWGでは通常号の刊行六回に大会特集号二回を加えて年八回刊行で試算を行いました。その際、一号当たりの掲載論文数を現在より増やすことを想定し、通常号の頁数について(ⅰ)一三〇頁と(ⅱ)一六〇頁の二通りを考えました(大会特集号については、一号一三〇頁、一号二〇〇頁で想定)。

 どちらの場合でも、刊行回数の削減と頁数の増加を考え合わせて試算した結果、(ⅰ)では五〇二万一〇五七円、(ⅱ)では四六三万〇四五七円の削減が見込まれました。

③ 電子媒体に変換し、刊行回数を維持する。

 会誌を電子媒体に変換した場合、削減される支出は印刷費のうち印刷・用紙・製本代(印刷費全体の約四〇%)、発送費、封筒代、発送バイト代と考えられます。一方で、刊行後の公開についてはJ-stageで行うことが考えられますが、J-stageは広告掲載を認めていないため広告収入(二〇二五年度で一四一万二〇〇〇円、表1参照)がなくなることになります。以上の条件(一二回刊行の合計頁数は二〇二五年度と同様とする)で試算すると削減額は三八九万〇一〇六円になりました。

 これら三通りのケースにつき総合委員会で検討し、①の現在の刊行状況(回数・媒体等)を維持する、が適当であるとの結論に至りました。その理由としては、いずれの場合でも一定程度の会費値上げは避けられないが、②の場合値上げに加えて刊行回数を削減するとなると会員へのサービスが著しく低下すること、③の場合電子媒体に抵抗感を持つ会員が一定程度存在していると思われること、一旦媒体を変換すると後戻りがきかなくなること、などが挙げられました。ただ、①については経費削減額が限定的なので、会誌刊行経費以外の削減策を引き続き検討する必要があることが確認されました。

(二)会費改訂

 続いて会費の改訂額について、同様にWGにおける検討を経て二〇二六年二月一四日の総合委員会において審議され、正会員一年一二〇〇〇円、若手会員同六〇〇〇円で次回総会に提案することが決定されました。

 審議の参考となったシミュレーションが表5です。これは今後一〇年の会の収支について次の条件で算出したものです。

・正会員の減少を一年当たり五〇名と想定する。

・会費改訂の開始を二〇二八年度とする(3)。

・一年当たりの支出を本年度(約二三〇〇万円)より三〇〇万円削減する。

・今後一〇年間の合計としての収支を均衡させる。

以上の条件のもとで正会員の会費を一万二〇〇〇円に設定すれば、二〇三五年度までの収支合計は一三万七〇〇〇円の黒字となります。もちろん、これはあくまでもシミュレーションであり、次に述べるように今後どういう状況が招来するかによって不透明なところも少なくありませんが、今回の改訂額算定の根拠となり得ると判断した次第です。

 例えば、このシミュレーションで一年当たりの会員減少数を五〇名としたのは表1に挙げた毎年度の減少数からすると、若干控え目の想定といえます。また今後の会支出を二〇〇〇万円で固定していますが、会活動にかかる諸経費の上昇は想定されていません。従って、前述の会誌刊行経費以外の経費削減策あるいは収入増加策、さらに会員の減少食い止め策を今後も継続的に検討・実施していくことが求められているといえます。

四、会活動の諸改革

 以上の検討を行うことと併行して、WGおよび総合委員会では現在の会活動を持続的に維持していくために必要な諸改革についても検討してきました。その際の基本的な考え方は、現在の会活動に支障をきたさない範囲で支出を削減するとともに可能な限りで収入を増やすこと、会員であることのメリットを最大限受けられるようにすること、の二点です。以下、委員会ごとに本年度に新たに開始した(あるいは検討中の)諸改革を些細な事項も含めてご紹介します。

【研究委員会】

・例会資料代の導入

従来会員・非会員ともに参加無料であった例会について、非会員(学生・院生を除く)のみ資料代五〇〇円を徴収することにしました(二〇二七年度例会より)。

・大会・例会等の報告者への交通費・宿泊費支給のあり方

報告者の負担軽減を図りつつ、より合理的な基準を作成すべく検討中です。

・大会の持ち方

現在隔年で実施している個別報告に代わり、より多くの会員に大会報告の機会を提供するための形態を検討中です。

【編集委員会】

・執筆者への抜き刷り献呈廃止

従来執筆者には抜き刷りを献呈していましたが、代わってPDFをお渡しすることにし、抜き刷り希望者には実費を求めることにしました。

・郵送費用の節減

従来委員や審査者との投稿原稿のやりとりは郵便(レターパック)で行っていましたが、原則としてすべてPDFへ変更しました。

・印刷費用見積の請求

現在請け負っている印刷業者以外の複数業者に印刷費用見積を請求し、支払い価格がより適正になるよう努めました。

・会誌一号あたりの頁数管理の厳格化

会誌の内容充実を図る一方で、経費増に直結する一号あたりの頁数についてはより管理を厳格化していくことにしました。

・電子メールによる投稿許可

従来は郵送のみを想定していた投稿について、電子メールによるものも認めることにし、投稿規定の改正を行いました(二〇二六年八月より実施)。

【総務委員会】

・委員会資料の両面コピー化

・大会における会場整理費の値上げ

従来会員一〇〇〇円、非会員一五〇〇円、学部生五〇〇円としていた大会における会場整理費を、非会員のみ二五〇〇円に値上げすることにしました(本年度大会より)。

・歴史学研究会大会書籍展示出張廃止

経費削減の観点から廃止することにしました(本年度大会より)。

おわりに

 以上述べてきましたように、本年度私たちは会費改訂・会活動改革について検討を行ってきました。その際私たちが留意してきたのは、現在の会活動を後退させないこと、そのうえで中長期的に会活動を維持していくための具体的方策を立てること、の二点でした。

ご説明してきましたような趣旨に基づき、会費の改訂および会活動の改革につき、私たちは一〇月三日開催予定の本年度総会にご提案することを考えております。会員のみなさんにおかれましては、ぜひ本提案をお読みいただき、総会の場において積極的にご意見等をお寄せくださいますようお願いする次第です。

本会だけでなく学界全体を取り巻く困難な状況は今後も続くと思われますが、一層のご助言・ご指導を賜りますよう重ねてお願いします。

(1)なお本会には現在約二四〇〇万円の基金が積み立てられています。この基金で赤字財政の補塡はできないのか、という疑問が生じるかもしれません。しかし基金については二〇〇三年一一月八日に総合委員会で承認された「基金についての内規」があり、その「3 基金の規模は以下の条件を同時に満たすように設定する」には「イ 会員に三ヶ月分の会費を返戻できるだけの規模を維持する」「ロ 無収入の状態で三ヶ月分の会誌を発行できるだけの費用を確保する。またそのための職員を雇用するだけの人件費を備えておく」と規定されています。これは、将来万一本会が解散することになっても、解散決定時点で投稿されていた論文を審査し掲載するまでの期間(三ヶ月を想定)は無収入でも会活動を維持することを可能にするためのものとして基金を位置づけていることを意味しています。

(2)本会では、今から五年前の二〇二一年五月一五日の総合委員会において「将来構想検討特別委員会」が設置されていました。同委員会は「会の抱える困難を抜本的に打開するため、研究活動、編集活動、科学運動・庶務活動などにつき、総合的な見地に立って具体的な方針を取りまとめ、総合委員会に提案する」(将来構想検討特別委員会規則第二条)ことを目的としていました。そして同委員会は一年間の検討の末、二〇二二年五月一一日付で「答申書」を総合委員会に提出しています。

「答申書」は次の七項目から構成されていました。

(一)リモートをより積極的に活用し、研究活動の拡大を目指すとともに、業務の効率化を進める。

(二)三委員会の協力体制の強化を推進する。

(三)大会・例会・部会等のあり方や、それらへの会員の参加形態を多様な形にする。

(四)問題提起的で、学界を牽引する、魅力ある会誌編集を目指す。

(五)会費割引制度・納入制度の工夫を行う。

(六)会からの情報発信体制を強化するとともに、会員の声を会活動に反映させる体制を構築する。

(七)今後の財政状況を注視しつつ、必要に応じて対策を講じる。

「答申書」に示された項目の中には、その後の会活動に反映されているものや、今回のWGにおける検討の基盤になったものも含まれていますが、これが作成された時点では会財政の深刻な状況がまだ表面化していなかったことも手伝ってか、同委員会で検討された内容が会員全体に共有されるまでには至らなかったと思われます。

(3)会費改訂の提案は本年度総会(二〇二六年一〇月三日開催予定)において行うべく準備を進めていますが、本会の事業年度は毎年九月一日に始まり翌年八月三一日に終わるものと定められており(会則第三条)、年度途中における改訂は会費に関わる事務作業をはじめとする実務上の困難を伴うことが予想されます。従って実際の改訂は、二〇二七年九月に始まる二〇二八年度からとすることを想定しました。

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