内閣府は、去る二〇二三年四月一七日に開催された日本学術会議第一八七回総会の席上において、日本学術会議の会員選考に際して選考諮問委員会なるものを設置することなど、日本学術会議の政府からの独立性を侵害する内容を含む日本学術会議法の改正案を提示した。こうした政府当局による学術の独立性への介入は、かつて超国家主義や軍国主義によって学問・研究の自由やその学問としての存立を脅かされた痛恨の過去を有する歴史学の研究者として、とうてい容認できるものではない。Continue reading 日本学術会議声明「「説明」ではなく「対話」を、「拙速な法改正」ではなく「開かれた協議の場」を」(二〇二三年四月一八日)を支持し、日本学術会議法の拙速な改正に反対する声明
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世田谷区史編さんにおける「著作者人格権の不行使」問題についての声明
世田谷区は二〇一六年から世田谷区史編さん事業を開始し、原始・古代から近現代にわたる史料の収集・調査にあたってきました。ところが、二〇二二年、執筆の段階になって突如、委員(歴史学者)に対し「著作者人格権の不行使」を求め、承諾しなければ編さん委員としての委嘱を打ち切ると通告してきました。私たち出版産業で働くフリーランスの組合であるユニオン出版ネットワークは、この「著作者人格権の不行使」要求に強く抗議します。Continue reading 世田谷区史編さんにおける「著作者人格権の不行使」問題についての声明
内閣府「日本学術会議の在り方についての方針」(二〇二二年十二月六日)の撤回(再考)を求める声明
内閣府は、去る二〇二二年十二月六日、「日本学術会議の在り方についての方針」(以下、方針)を公表し、あわせて二〇二三年一月二十三日に召集される通常国会において日本学術会議の「改革」に関連する法案を提出する意向を示した。これに対し、私たち日本歴史学協会は、この方針に再考を求める日本学術会議の意向を強く支持し、内閣府に対してこの方針の見直しと日本学術会議の「改革」に関連する法案を通常国会に提出することのないよう強く求める緊急声明を発した。Continue reading 内閣府「日本学術会議の在り方についての方針」(二〇二二年十二月六日)の撤回(再考)を求める声明
【声明】日本学術会議の「改革」に関連する法案の提出に反対する
内閣府は二〇二二年一二月六日に「日本学術会議の在り方についての方針」(以下、「方針」)を公表するとともに、この「方針」を基にして日本学術会議会員の選考過程に関与する第三者委員会の設置を含めた法改正の準備を進め、二〇二三年一月に召集される通常国会において関連する法案を提出するという意向を示した。これに対して日本学術会議は、内閣府「方針」が日本学術会議との十分な協議を経ずに出されたこと、その内容が学術会議の独立性を侵害する恐れが多分にあること、そして拙速な法改正を進めようとしていることに強い危惧を抱き、二〇二二年一二月二一日に「声明・内閣府『日本学術会議の在り方についての方針』(令和四年一二月六日)について再考を求めます」を発出した。そこでは「方針」で示された内容について六点にわたる懸念事項が詳細に述べられており、政府に「方針」の再考を強く求めている。これうけて、多くの諸学協会・科学者も日本学術会議の声明に対する賛同の姿勢を示し、日本史研究会も緊急声明「日本学術会議の在り方についての政府方針の再考を求める」(二〇二二年一二月三一日)を出したところである。Continue reading 【声明】日本学術会議の「改革」に関連する法案の提出に反対する
要望書 国立国会図書館デジタルコレクションの著作権処理の改善による知識情報基盤の拡充を求めます
文部科学大臣 永岡桂子 殿
文化庁長官 都倉俊一 殿
国立国会図書館長 吉永元信 殿
国立研究開発法人科学技術振興機構理事長 橋本和仁 殿
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立情報学研究所所長 喜連川優 殿
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【緊急声明】日本学術会議の在り方についての政府方針の再考を求める
日本史研究会は、二〇二二年一二月二一日に日本学術会議総会において決定・発出された「声明・内閣府『日本学術会議の在り方についての方針』(令和四年一二月六日)について再考を求めます」に全面的に賛同します。
二〇二二年一二月三一日 日本史研究会
声明 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を強く非難し、近時の日本国内における動向を憂慮する
二〇二二年二月二四日に開始されたロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、未だ終結の兆しがみえず更なる長期化の様相を呈している。既に民間人を含む多くの人命が失われ、攻撃による被害は教育機関や文化施設にも及んでおり、史資料の散失や文化財の破壊が現実のものとなっている。このたびの侵攻は、武力をもって他国の主権を脅かす明らかな侵略行為であり、世界の平和と秩序を乱すものである。さらに、こうした行為の正当化のために、歴史を悪用したプロパガンダが行われていることは、決して看過できるものではない。また、核兵器使用の可能性への言及や、原子力発電所への攻撃は、断じて容認することはできず、ここに強く非難する。
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【声明】農林業センサスの農業集落調査廃止に反対する
農林水産省は、二〇二二年七月二八日に行われた農林業センサス研究会において、次回二〇二五年度の調査より農業集落調査を廃止する方針を提起した。
教科書記述に対する日本政府の政治介入を憂慮する
日本政府は、2021 年の高校地理歴史科・公民科の必修科目に続き、2022 年には同選択科目の教科書検定結果の概要を公表しました。これらの教科書は、2022 年から高校に新たに適用される学習指導要領に準拠したものです。
これらの教科書のあちこちから、よりよい教科書をつくるために執筆者や編集者が注いだ努力を読み取ることができます。とりわけいくつかの教科書では、日本の侵略戦争と植民地支配について批判的に記述し、過去を反省する姿も示されています。このような努力は、平和と人権を重視する教科書をつくろうとするすべての人々にとって、よい参考になるでしょう。しかし一方で、これらの教科書には日本政府が積極的に介入した痕跡が随所に見られてもおり、執筆者や編集者の努力に水を差しています。
この背景には、日本政府が行った 2014 年 1 月の教科用図書検定基準と同年 4 月の教科用図書検定審査要項の改定があります。この 2 回の改定で最も重要な点は、日本政府の見解を教科書に反映させることでした。これに加えて、日本政府は 2021 年に閣議決定を通じて「従軍慰安婦」「強制連行」「連行」などの用語を使用できないようにしました。今回の教科書検定の過程で、政府はこれらの条項を根拠に、教科書の該当内容の修正を教科書発行者に事実上強要しました。その結果、ほとんどの教科書発行者が政府の見解に従って内容を修正せざるをえませんでした。
1993 年、日本政府は自らの調査結果に基づいて河野談話を発表し、日本軍と官憲が日本軍「慰安婦」の動員や慰安所の管理に関与したという事実を認めています。それ以降、日本の歴代首相は河野談話を継承すると述べてきました。
ところが安倍政権は、河野談話を継承するとしながらも、日本軍「慰安婦」の動員に軍と官憲が直接関与した強制連行はなかったと述べ、問題の本質を避けました。さらに昨年菅政権は、教科書から「従軍慰安婦」「強制連行」「連行」などの用語を削除させ、日本軍の関与を否定するに至っています。これは従前の政府見解を自ら否定するものにほかならず、日本や世界の学界による研究成果とも合致しないものです。朝鮮人労働者の「強制連行」「連行」を否定することも同様です。日本政府の主張は、植民地の状態そのものが強制的な状況であることを考慮しない帝国主義的な立場をいまだに放棄していないことを示すものです。このような介入は、1982 年に日本政府自らが、教科書記述において「近隣諸国」の立場を考慮すると表明した国際的な約束を破棄するものでもあります。
日本の教科書における歴史記述、ひいては世界各国の教科書に、侵略戦争と植民地支配に対する反省が込められ、人権の大切さに気づかせる内容が盛り込まれることを願う私たち日中韓 3 国の市民は、教科書記述に対する日本政府の権力的な介入に深い憂慮を表明せざるをえません。また、そのような介入が、東アジアの平和と世界平和に深刻な脅威になっていると考えます。私たちはこのような憂慮を込めて、日本政府に対し、以下のとおり要求します。
1. 教科書に対する政治介入を直ちに中止せよ
2. 「従軍慰安婦」「強制連行」「連行」などの用語使用禁止を撤回せよ
3. 被害者の人権を大切にし、アジアと世界の平和に向けた歴史教育を支援せよ
4. 政府間の歴史対話を再開するとともに、市民社会の歴史対話を積極的に支援せよ
2022年7月12日
呼びかけ団体 子どもと教科書全国ネット21(日本)
アジアの平和と歴史教育連帯(韓国)
団体賛同(日本182団体、韓国8団体)
個人賛同(日本337名、韓国213名)
※日本史研究会は賛同団体に加わりました。
「従軍慰安婦」など歴史用語の教科書記述に対する政府の介入に抗議し、政府見解とそれに基づく訂正申請承認の撤回、2014年改定検定基準の廃止を求める(要求書)
要求書
岸田文雄内閣総理大臣・末松信介文部科学大臣様
「従軍慰安婦」など歴史用語の教科書記述に対する政府の介入に抗議し、政府見解とそれに基づく訂正申請承認の撤回、2014年改定検定基準の廃止を求める
Ⅰ.要求項目
1.「従軍慰安婦」「強制連行」などについての4月27日の答弁書(閣議決定)を撤回すること。
2.9月8日の訂正申請承認を撤回すること。また、更なる訂正申請の強要、文科大臣による訂正申請の勧告を行わないこと。
3.社会科並びに地理歴史および公民の教科書検定基準の2014年改定部分を直ちに廃止すること。
Ⅱ.理由
文部科学省は「従軍慰安婦」「いわゆる従軍慰安婦」、「強制連行」「強制労働」の記述について、教科書発行者5社から、現行版の中学校社会科、高校日本史・世界史(A・B)および「現代社会」「倫理」並びに来年度から使用される高校歴史総合の各教科書、5社29点について、「記述の削除や変更の訂正申請」を承認したと9月8日に明らかにした。今回の訂正申請は、「自主的」の形をとっているが、明らかに政府・文科省による強要である。
この問題は、3月の参議院文教科学委員会での自民党議員の質問に対して、萩生田文科大臣が、慰安婦に関する用語の政府の統一的見解がまとまれば、それに「基づいて適切に検定を行っていくこととなります」との答弁に始まり、「日本維新の会」幹事長馬場伸幸衆議院議員の「従軍慰安婦」、「強制連行」などに関する質問主意書と、それに対する閣議決定された菅内閣の以下の答弁書(政府見解、4月27日)を契機に本格的に展開された。
答弁書(概要)
①「いわゆる従軍慰安婦」との記述は「従軍」と「慰安婦」の組み合わせも問題で、今後は単に「慰安婦」が適切である。
②戦時における「朝鮮半島から日本への労働者の移入」は、「募集」「官斡旋」など様々な経緯があり、「強制連行」または「連行」ではなく「徴用」を用いることが「適切」である。
この後の国会質疑で政府は、「政府見解」に沿って、訂正申請を教科書会社に働きかけること、訂正申請を行わない場合には文科大臣による「訂正申請勧告」もありうると答弁した。文科省は、さらに関係する教科書を発行する15社の編集担当役員を対象に「臨時説明会」を開催し、訂正する場合は「6月末までに申請」「8月頃、訂正申請承認」などの日程も伝えた。
これは、政府見解で教科書記述を恣意的に変えさせたことにほかならず、「検定時」だけでなく、政府の時々の意向で教科書記述を変えさせることとなる。憲法の保障する学問の自由、言論・表現・出版の自由の度重なる蹂躙である。
これらの訂正の根拠とされるのは、菅前首相も答弁しているように、2014年改定の義務教育の社会科および高校の地理歴史・公民の教科書検定基準「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること」である。日本弁護士連合会は、この検定基準は「国による過度の教育介入として憲法26条に違反し子どもの学習権等を侵害するおそれがあるといわざるを得ず,これらの撤回を求める」(2014年12月19日付「教科書検定基準及び教科用図書検定審査要項の改定並びに教科書採択に対する意見書」)としていた。
この規定に基づき、いままでも領土問題などで執拗に政府見解が書かされ、「改定」検定基準の他の規定で南京虐殺事件、関東大震災の被害者数などを学問研究の知見に基づいて記述することができなくなっている。日弁連の指摘した「おそれ」は現実のものとなっている。検定基準の2014年「改訂部分」は、廃止すべきである。
2021年10月18日
子どもと教科書全国ネット21
賛同団体連名(全一九四団体)
※日本史研究会は賛同団体に加わりました。