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日本史研究706号(2021年6月)

日本史研究706号(2021年6月) published on
研  究  
百姓一揆という罪科の記憶―宝暦一二年飯田藩千人講騒動の〈その後〉― 林 進一郎
大久保利通と内務省勧農政策 小幡 圭祐
シリーズ 新自由主義時代の博物館と文化財  
コロナ禍と博物館②  
新型コロナウイルス蔓延下における博物館の諸活動と今後―オンライン・現代資料・パブリック― 後藤  真
書  評  
太田久元著『戦間期の日本海軍と統帥権』 森  茂樹
黒川伊織著『戦争・革命の東アジアと日本のコミュニスト 1920-1970年』 立本 紘之
矢嶋 光著『芦田均と日本外交―連盟外交から日米同盟へ―』 樋口 真魚
部会・委員会ニュース  

第9回「歴史から現在を考える集い」

第9回「歴史から現在を考える集い」 published on

第9回「歴史から現在を考える集い」は、今年中の開催を中止させていただくことになりました。
「歴史から現在を考える集い」に向けて準備をいただいていた関係者の皆様、また参加を予定しておられた皆様には申し訳ございませんが、現在の状況をご理解いただけましたら幸甚です。

第9回「歴史から現在(いま)を考える集い」
「「選別」の根源―社会的有用性というまなざし―」
〇講演 高野信治 氏(九州大学)
 「障害認識を遡る」
    藤井渉 氏(日本福祉大学)
 「戦力ならざる者の戦争と福祉」
 2016年に発生した相模原障害者施設殺傷事件は、障害者に対する差別や偏見によって引き起こされたとされています。また、重度の障害を持つ国会議員が「特別扱いされている」という声も聞こえてきます。このような差別や偏見が、現在の日本において確かに存在しているように思います。こういった考え方に対して、その起源を探るという試みは、「歴史」を考えることが現在の社会に対する認識を深めるひとつの手段となるのではないでしょうか。
 そこで、第9回「歴史から現在を考える集い」では、近世日本を中心に障害の有無による人間の区別・差別といった問題を研究しておられる高野信治氏と、社会福祉学の観点から、障害者福祉の制度を歴史的に研究しておられる藤井渉氏をお招きします。おふたりのご講演を通して、障害者に対する差別や偏見が発生する原因を歴史的に捉え直し、上記の問題を考える場にしていきたいと思います。
(※この催しは、昨年中止になったものを再企画したものです)
〇日 時 8月28日(土)14:00〜17:30(受付開始13:30)中止になりました。
〇会 場 平安女学院大学 京都キャンパス 室町館2階201教室
  (地下鉄烏丸線丸太町駅下車、徒歩5分)
  会場整理費500円。事前申込不要(新型コロナウイルス感染症対策のため、参加者が100名を超えた場合は入場をお断りする場合があります)。感染予防対策にご協力ください。
  お問い合わせ 日本史研究会 075-(256)-9211

※新型コロナウイルス感染症対策について
 会場では、マスクの着用をお願いいたします。また、三密の回避、身体的距離の確保、大声を出さないなど、京都府の定める基本的な感染予防対策にご協力いただけない場合は、ご退出いただく場合もございます。

第9回「集い」チラシ

大社基地遺跡群の学術調査、文化財指定と保存に関する要望についての賛同署名

大社基地遺跡群の学術調査、文化財指定と保存に関する要望についての賛同署名 published on

 私たち(島根史学会・島根考古学会・戦後史会議松江の3団体)は、アジア・太平洋戦争末期に海軍航空基地として建設された、大社基地及びその関連施設(大社基地遺跡群)の学術調査・文化財指定と保存・整備・活用を島根県と出雲市に要望しています。 

 「大社基地遺跡群」は、アジア・太平洋戦争最末期の1945年3月から6月にかけて地元住民・国民学校生徒までも動員し、「本土決戦」に備えて斐伊川支流の新川廃川跡に急造された海軍航空基地で、長く陸上自衛隊出西訓練場として利用されてきました。その間、中国財務局は「主滑走路」跡を「切り売り」してきたのですが、昨年12月、原状をとどめる部分を公売に付し、地元企業が住宅団地として開発する計画で落札して今に至っています。現時点では、出雲市・島根県とも保存に向けて明確な対応をとることを表明していませんので、事態は重大な局面が続いています。

 「大社基地遺跡群」については、これまでも島根県内の研究者によって調査・研究が行われ、小学校から大学に至る各学校で平和学習・歴史教育の実地教材、フィールドワーク対象地として活用されてきました。最近でも、戦後史会議・松江が調査・編纂・刊行した『島根の戦争遺跡』(2021年2月刊行)で、松江市・出雲市・雲南市内の507に及ぶ戦争遺跡の中で、最大規模のものと確認されています。

 この間、戦争遺跡保存全国ネットワーク共同代表の出原恵三氏が現地調査を実施した上で、十菱駿武氏とともに評価書を作成され(島根県・出雲市に提出済み)、一般社団法人日本考古学協会も埋蔵文化財保護対策委員会委員長名の「要望書」を文化庁長官、島根県知事・教育長、出雲市長・教育長に提出されました。これらの評価書・要望書の基礎になった「大社基地遺跡群」の特徴と意義は次のとおりです。

 

①遺跡の規模が大きいこと。

コンクリート舗装された主滑走路を中心に東西・南北各6km余(出雲市~松江市玉湯町)にわたる範囲に遺存しています。

②アジア・太平洋戦争最末期に建設された海軍航空基地の全体構成・構造を今に遺しています。

1)多様な航空基地施設の遺構※で構成されています。

※主滑走路、掩体、地下壕、兵舎、誘導路、対空機銃陣地、設営部隊本部建物=旧出西国民学校校舎など

2)基地の建設時期である1945年3月~6月は、「本土決戦」が呼号され、また、沖縄戦と重なる状況であり、「大社基地遺跡群」はこの時期の戦争遺跡として特段の重要性をもつものです。

③建設時の原状をよく遺して保存されています。

「主滑走路」(現在も幅60メートル×長さ600メートルがそのまま遺っています)の型枠作り工法によるコンクリート舗装など建設当時の状況を伝えています。

④広範な県民を動員して建設されたものです。

周辺住民・鰐淵鉱山鉱夫・国民学校学童も、基地建設に動員されました。

⑤ ④の関係住民に加え、基地勤務者が存命で、聴取調査が可能です。

⑥島根県内(とくに出雲市・松江市)で平和教育に広く活用されています。

従来も小学校の平和学習で利用されてきましたが、「コロナ禍」で広島修学旅行が中止されたことにともない、平和学習の場として「大社基地」が見学学習で利用されています。

 

2021年5月

島根史学会

島根考古学会

戦後史会議松江


2021年3月17日

島根県知事 丸山達也様

島根県教育委員会教育長 新田英夫様

 

島根史学会会長 竹永三男

島根考古学会会長 松本岩雄

戦後史会議・松江世話人代表 若槻真治

 

  大社基地遺跡群の学術調査、文化財指定と保存に関する要望について

 

 私たちは、アジア・太平洋戦争末期に海軍航空基地として建設された、島根県出雲市斐川町出西・直江・荘原地区を中心とした広い地域に存在する大社基地及びそれに附属する遺跡群(以下、大社基地遺跡群と呼ぶ)の学術調査と保存、ならびに文化財指定を要望します。

 大社基地遺跡群は、アジア・太平洋戦争当時の海軍航空基地として、その遺構を良好に残す島根県最大規模の、また全国的にも稀有の戦争遺跡です。

 アジア・太平洋戦争の末期には、戦況の悪化とともに、首都圏、大都市圏、九州南岸などに点在していた陸海軍の航空基地は次々と空襲を受けました。そこで、本土決戦に備えて航空機を温存しようとした軍部は、空襲による被害が比較的少ないと考えられた日本海側に航空基地を移転しようとしました。そして、1945年(昭和20)3月から6月にかけて、120m×1700mの主滑走路(そのうちコンクリート舗装部分60m×1500m)と、30m×600mの応急離陸路等を持つ海軍航空基地が、国民学校生までをも動員して急遽建設されることになりました。こうして建設された大社基地は、当時、西日本最大の爆撃・雷撃の拠点でした。

 大社基地遺跡群には、現在でも主滑走路のおよそ半分が当時のままの状態で残されているほか、その周辺には、東西およそ6キロメートル、南北およそ6キロメートルの範囲で、配備された爆撃機「銀河」の掩体、爆弾や魚雷を格納した地下壕、兵舎跡、対空機銃陣地跡、基地設営隊本部が置かれた旧出西国民学校校舎などが残されています。国立公文書館アジア歴史資料センターでは、大社基地等の造営を担った舞鶴海軍鎮守府所属第338設営隊の戦時日誌など、関連する多くの文献資料が確認できるという点でも、貴重な遺跡です。

 以上のように、大社基地遺跡群は、海軍航空基地としての規模が大きいこと、主滑走路と附属施設が建設当時の原状をよく残していること、関連する文献資料が豊富なことなどから、戦争遺跡として全国的にも稀な、貴重な文化財であると考えます。このことは県内でも夙に注目されており、島根県教育庁文化財課編『島根県の近代化遺産島根県近代化遺産(建造物等)総合調査報告書』(平成14年3月、島根県教育委員会)にも「陸上自衛隊出西訓練場(海軍大社基地関連施設群)」として掲載されています。

 このことに加え、大社基地遺跡群は、貴重な平和学習の場として、これまでも、また現在も学校教育・社会教育で活用されています。特に主滑走路は、子供たちが戦争の実態や当時の雰囲気を実感する上で格好の教材として活用されています。

 このように大社基地遺跡群は、戦争遺跡として島根県を代表する貴重な文化財であるにもかかわらず、これまで開発に伴う発掘調査が行われた以外には公的な学術調査は行われておらず、調査・研究は、もっぱら民間研究者による個別的な努力に委ねられてきました。そのため各種の遺構の正確な分布調査は十分にはなされておらず、学術的研究もなお不十分な状態にあります。

 現在、大社基地遺跡群の中の主滑走路の大部分は民間に売却されることになり、落札者が確定したと報じられています。このことも、学術的調査と研究が不十分であったこと、その必要性を文化財保護行政当局に働きかけなかったことによるものとして、私たち研究団体としても、深く反省すべきことと考えております。

 以上のことから、私たちは、大社基地遺跡群について、以下のことを要望します。

 

要望事項

1.大社基地遺跡群の総合的な学術調査を行うこと。

2.大社基地遺跡群を県指定史跡に指定して保存すること。

3.貴重な戦争遺跡として保存管理計画を策定し、今後の整備と活用について検討すること。

以上

 

〔学会賛同署名〕

上記の「大社基地遺跡群の学術調査、文化財指定と保存に関する要望について」の趣旨を確認し、賛同します。

2021年5月15日   日本史研究会

 


2021年4月9日

出雲市長 長岡秀人様

出雲市教育委員会教育長 杉谷学様

 

島根史学会会長 竹永三男

島根考古学会会 長松本岩雄

戦後史会議・松江世話人代表 若槻真治

 

  大社基地遺跡群の学術調査、文化財指定と保存に関する要望について

 

 私たちは、アジア・太平洋戦争末期に海軍航空基地として建設された、島根県出雲市斐川町出西・直江・荘原地区を中心とした広い地域に存在する大社基地及びそれに附属する遺跡群(以下、大社基地遺跡群と呼ぶ)の学術調査と保存、ならびに文化財指定を要望します。

 大社基地遺跡群は、アジア・太平洋戦争当時の海軍航空基地として、その遺構を良好に残す島根県最大規模の、また全国的にも稀有の戦争遺跡です。

 アジア・太平洋戦争の末期には、戦況の悪化とともに、首都圏、大都市圏、九州南岸などに点在していた陸海軍の航空基地は次々と空襲を受けました。そこで、本土決戦に備えて航空機を温存しようとした軍部は、空襲による被害が比較的少ないと考えられた日本海側に航空基地を移転しようとしました。そして、1945年(昭和20)3月から6月にかけて、120m×1700mの主滑走路(そのうちコンクリート舗装部分60m×1500m)と、30m×600mの応急離陸路等を持つ海軍航空基地が、国民学校生までをも動員して急遽建設されることになりました。こうして建設された大社基地は、当時、西日本最大の爆撃・雷撃の拠点でした。

 大社基地遺跡群には、現在でも主滑走路のおよそ半分が当時のままの状態で残されているほか、その周辺には、東西およそ6キロメートル、南北およそ6キロメートルの範囲で、配備された爆撃機「銀河」の掩体、爆弾や魚雷を格納した地下壕、兵舎跡、対空機銃陣地跡、基地設営隊本部が置かれた旧出西国民学校校舎などが残されています。国立公文書館アジア歴史資料センターでは、大社基地等の造営を担った舞鶴海軍鎮守府所属第338設営隊の戦時日誌など、関連する多くの文献資料が確認できるという点でも、貴重な遺跡です。

 以上のように、大社基地遺跡群は、海軍航空基地としての規模が大きいこと、主滑走路と附属施設が建設当時の原状をよく残していること、関連する文献資料が豊富なことなどから、戦争遺跡として全国的にも稀な、貴重な文化財であると考えます。このことは県内でも夙に注目されており、島根県教育庁文化財課編『島根県の近代化遺産島根県近代化遺産(建造物等)総合調査報告書』(平成14年3月、島根県教育委員会)にも「陸上自衛隊出西訓練場(海軍大社基地関連施設群)」として掲載されています。

 このことに加え、大社基地遺跡群は、貴重な平和学習の場として、これまでも、また現在も学校教育・社会教育で活用されています。特に主滑走路は、子供たちが戦争の実態や当時の雰囲気を実感する上で格好の教材として活用されています。

 このように大社基地遺跡群は、戦争遺跡として島根県を代表する貴重な文化財であるにもかかわらず、これまで開発に伴う発掘調査が行われた以外には公的な学術調査は行われておらず、調査・研究は、もっぱら民間研究者による個別的な努力に委ねられてきました。そのため各種の遺構の正確な分布調査は十分にはなされておらず、学術的研究もなお不十分な状態にあります。

 現在、大社基地遺跡群の中の主滑走路の大部分は民間に売却されることになり、落札者が確定したと報じられています。このことも、学術的調査と研究が不十分であったこと、その必要性を文化財保護行政当局に働きかけなかったことによるものとして、私たち研究団体としても、深く反省すべきことと考えております。

 

 以上のことから、私たちは、大社基地遺跡群について、以下のことを要望します。

 

要望事項

1.大社基地遺跡群の総合的な学術調査を行うこと。

2.大社基地遺跡群を県指定史跡に指定して保存すること。

3.貴重な戦争遺跡として保存管理計画を策定し、今後の整備と活用について検討すること。

以上

 

〔学会賛同署名〕

上記の「大社基地遺跡群の学術調査、文化財指定と保存に関する要望について」の趣旨を確認し、賛同します。

2021年5月15日   日本史研究会

 

2021年度日本史研究会総会・大会

2021年度日本史研究会総会・大会 published on

2021年度日本史研究会総会・大会

期日:2021年10月9日(土)・10日(日)

会場:立命館大学 衣笠キャンパス(京都市北区等持院北町56-1)

大会テーマ:日本史における社会の変動と政治・文化

   10月9日(土)

総会 9:00~11:30(学而館GJ402教室)
個別報告 13:00~17:30
[第一会場](学而館GJ402教室)
第一報告 13:00~14:10 神谷 正昌 藤原道長と摂関政治
第二報告 14:40~15:50 木下  聡 室町幕府申次衆の基礎的研究
第三報告 16:20~17:30 川本 慎自 中世禅僧と造営・土木知識
[第二会場](学而館GJ403教室)
第一報告 13:40~14:50 清水 光明 近世日本の出版統制と儒学・仏教
第二報告 15:20~16:30 塩出 浩之 1880年代前半の朝鮮問題と東アジア新聞ネットワーク

   10月10日(日)共同研究報告

[第一会場](研心館KE402教室)
古代史部会 報告  9:30~11:00 討論 13:30~15:00
 駒井  匠 八・九世紀の天皇における仏教的国王観の受容と展開
中世史部会 報告 11:20~12:50 討論 15:20~17:20
 酒匂由紀子 中世後期の「酒屋・土倉」と室町幕府
[第二会場](学而館GJ402教室)
近世史部会 報告 10:30~14:40 討論 15:15~17:00
 千葉 拓真 近世中後期から幕末における藩と京都―藩機構と公武関係の分析から
 後藤 敦史 「摂海」防備からみる幕末政治史
[第三会場](学而館GJ403教室)
近現代史部会 報告 10:00~12:40 コメント・討論 14:00~17:00
共通テーマ : 近代日本における医療システムと地域社会
 田中 智子 大阪府における病・医療とアメリカン・ボード
  医療宣教師 ―医の開化と地域化
 塩原 佳典 明治・大正期における郡域医療圏の持続
  ―長野県諏訪地方の事例
 コメント 尾﨑 耕司

*オンライン方式との併用にて開催予定です。
詳細は、決定次第お知らせいたします。

本年の大会は終了いたしました。ありがとうございました。

 

日本史研究705号(2021年5月)

日本史研究705号(2021年5月) published on
特集 外国史としての日本史研究
特集にあたって 編集委員会
研究展望  
韓国における日本史研究の過去と現在 朴 秀哲
ロシアにおける日本史研究の現状と動向―中世史を中心に― アンナ・ドゥーリナ
中国における外国史としての日本史研究

劉 暁峰
劉 晨

ベトナムにおける日本史研究の回顧と展望
ファム・レ・フイ
シリーズ 新自由主義時代の博物館と文化財  
コロナ禍と博物館①  
コロナの記憶を残す―吹田市立博物館の取り組みとその課題・展望― 五月女賢司
書  評  
長谷部将司著『日本古代の記憶と典籍』 笹川尚紀
久水俊和著『中世天皇家の作法と律令制の残像』 秦野裕介
歴史通信  
少し長いひと言 鈴木利章
声  明  
新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論を批判する日本の研究者・アクティビストの緊急声明
部会・委員会ニュース  

第26回 史料保存利用問題シンポジウム東日本大震災10年と史料保存―その取組と未来への継承―

第26回 史料保存利用問題シンポジウム東日本大震災10年と史料保存―その取組と未来への継承― published on

第26回史料保存利用問題シンポジウム開催要領・プログラム 【シンポジウムポスター】

日時 2021年6月26日(土)13:30~17:30
オンライン開催<参加費無料300名まで先着 順 受付>
参加登録用ウェブサイト https://forms.gle/EieasBhbUBme6YFL6
主催 日本歴史学協会/日本学術会議史学委員会/ 日本学術会議史学委員会歴史資料の保存・管理と公開に関する分科会
後援 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会/日本アーカイブズ学会
テーマ 東日本大震災 10 年と史料保存―その取組と未来への継承
趣旨
 東日本大震災が発生したのは、今から10年前の2011年3月11日のことであった。千年に一度といわれる大地震と大津波、加えて福島第一原子力発電所の爆発事故による放射能災害が重なり、未曽有の大災害になった。さらに、その後も各地で大地震が続発し、地震のみならず火山噴火や豪雨による災害等、大きな災害に襲われ続けている。そして、この 1 年余にわたり新型コロナウィルス感染症が大流行して いるが、このコロナ禍のような疾病災害にも、私たちは向き合わなければならないのである。

 こうした現状を踏まえると、緊急時における速やかな史料の救済・保全に向けた対応はもちろん、大災害の続発を前提に 普段からの史料の保存・管理の取組が重要になってくる。近年では、そうした認識が深まるとともに、保全・保存の対象も古文書・公文書はもちろん、未指定も含む文化財全般へと広がり、市民ボランティアの参加が進むなど、被災史料に限らず広く歴史資料・文化財等の保全・保存に対する理解と活動が深化しているといえる。このような動向は、1995年の阪神淡路大震災以来の蓄積を踏まえつつ、とりわけ東日本大震災以降に、より顕著になってきたといえるのではないか。

 こうした状況認識のもと、「続発する大災害から史料を守る―現状と課題 ―」をテーマに開催した昨年度の第25回シンポジウムでは、歴史資料・文化財等の救済・保全活動に関わる行政・史資料ネット・ボランティア等の相互の役割、連携、限界といった課題が指摘されるとともに、次世代への継承の担い手についても議論になった。

 そこで、本年度のシンポジウムでは、昨年度のシンポジウムで示された課題を受けつつ、東日本大震災から10年という機会に 、原発災害への対応も含め、この10年間の被災地における歴史資料や文化財等の救済・保存への取組を振り返り、課題や問題点を確認し、歴史資料や文化財等を未来へ継承するための活動を展望することにしたい。

 なお、特別報告として、国立公文書館によるアーキビスト認証制度をめぐり、第1回アーキビスト認証の経緯や今後の取組について報告をお願いした。

報告
①佐藤 大介氏 (東北大学災害科学国際研究所准教授)
  「被災史料・被災地と向き合い続けて考えたこと―宮城での活動の経験から―」
②大和田侑希氏 (福島県富岡町住民課係長)
  「歴史資料保存・活用に関する行政職員が担うべき役割と可能性」
③阿部 浩一氏 (福島大学教授)
  「ふくしまの資料保全活動の10年を未来につなげる」
コメント 芳賀  満氏(日本学術会議会員 東北大学教授)
     佐々木和子氏(神戸大学大学院人文学研究科学術研究員)
特別報告
  伊藤 一晴氏(国立公文書館 上席公文書専門官)
  「令和2 年度アーキビスト認証の実施結果と令和 3 年度の取組について」

プログラム
13:30~13:35 開会挨拶:若尾 政希(日本学術会議会員 一橋大学教授)
13:35~13:40 趣旨説明:佐藤 孝之(日本歴史学協会史料保存利用特別委員会委員長)
13:40~14:10 第1報告:佐藤 大介(東北大学災害科学国際研究所准教授)
           「被災史料・被災地と向き合い続けて考えたこと―宮城での活動の経験から―」
14:10~15:40 第2報告:大和田侑希(福島県富岡町住民課係長)
           「歴史資料保存・活用に関する行政職員が担うべき役割と可能性」
14:40~15:10 第3報告:阿部 浩一(福島大学教授)
           「ふくしまの資料保全活動の10 年を未来につなげる」
15:10~15:20 休憩
15:20~15:50 特別報告:伊藤 一晴(国立公文書館上席公文書専門官)
           「令和2年度アーキビスト認証の実施結果と令和3年度の取組について」
            司会:新井 浩文(日本歴史学協会国立公文書館特別委員会幹事)
15:50~ 16:10 コメント:芳賀  満(日本学術会議会員 東北大学教授)
             佐々木和子(神戸大学大学院人文学研究科研究員)
16: 10~17: 25 パネルディスカッション
   パネリスト:佐藤 大介 大和田侑希 阿部 浩一
      司会:大友 一雄(日本学術会議連携会員 日本歴史学協会史料保存利用特別委員会幹事)
         熊本 史雄(日本歴史学協会国立公文書館特別委員会委員長 駒澤大学教授)
17:25~17:30 閉会挨拶:中野達哉(日本歴史学協会委員長 駒澤大学教授)

日本史研究704号(2021年4月)

日本史研究704号(2021年4月) published on

研  究

近世天皇家の葬制の変容と泉涌寺
  ―女院・皇子女死去時の対応を中心に―
佐藤一希

研究ノート

天正初期上杉・武田氏間和睦交渉再考 松島裕大

2020年度日本史研究会大会報告批判

全体会シンポジウム――高埜利彦・川口暁弘
共同研究報告―古代史部会(倉本一宏)/中世史部会(鎌倉佐保)/近世史部会(鶴田 啓)/近現代史部会(松沢裕作)

書  評

西本昌弘著『空海と弘仁皇帝の時代』 駒井 匠
山田康弘著『足利義輝・義昭―天下諸侍、御主に候―』 水野 嶺

要 望 書

「高輪築堤」の保存を求める要望書

部会・委員会ニュース

Job Opening Nagoya U (Modern Japanese or East Asian History)

Job Opening Nagoya U (Modern Japanese or East Asian History) published on

Nagoya University

Graduate School of Humanities

Japan-in-Asia Cultural Studies Program (JACS)

Global 30 International Programs

Nagoya, Japan

http://en.nagoya-u.ac.jp/employment/

 

The Graduate School of Humanities invites applications for a full-time, tenured position as Associate Professor in Modern Japanese or East Asian History. The successful candidate will be teaching in English in the Japan-in-Asia Cultural Studies Program (JACS), one of the Nagoya University Global 30 International Programs.

 We seek a candidate who has shown excellence in research and teaching in Modern Japanese or East Asian History. The G30 Program is known for its small class sizes, motivated students, and international atmosphere. The standard teaching load is up to eight courses per year. A course is generally comprised of 15 weekly lectures, each of which runs 90 minutes. The successful candidate will be expected to supervise students, provide them with guidance and engage in the admissions process. She or he should also contribute to expanding the international research profile of the Graduate School of Huamanities.

Qualifications:

  1. A doctoral degree in Modern Japanese or East Asian History.
  2. A demonstrated record of research excellence in Modern Japanese or East Asian History.
  3. A proven record of teaching. The post is open to anyone specializing in any subfield of Modern Japanese or East Asian History. We particularly welcome applicants who can teach courses in Research Methods.
  4. A demonstrated ability to supervise students at the undergraduate and graduate levels.
  5. Willingness to participate in the International Programs of the university, including but not limited to teaching courses to Japanese students and some administrative duties.
  6. Strong interpersonal skills and evidence of success working in a multicultural environment.
  7. Sufficient Japanese proficiency for general administrative tasks is required.

Number of positions: One

Terms of Employment: No term limit until the age of 65

Starting date: October 1, 2021 or as soon as possible thereafter

Compensation: Approximately JPY5,000,000-10,000,000/year (all inclusive). Salary will depend on qualifications and experience. Taxes and insurance will be withheld from the annual salary. 

Selection Procedure:

  1. Initial screening based on submitted documents (see below).
  2. Successful candidates will be invited to a personal interview either on-site or remote. In addition to the interview, a short demonstration lecture will be requested.

Application Documents:

  1. Cover letter
  2. Full curriculum vitae
  3. List of research achievements (including presentations, publications, grants, awards)
  4. List of courses taught (undergraduate and graduate)  
  5. Digital copy of PhD diploma
  6. Two letters of recommendation (to be submitted separately by the recommender)

Candidates who pass the initial screening will be asked to submit the following:

  1. Digital copies of up to 5 major publications
  2. Summary of research experience (1-2 pages)
  3. Proposal of future research plans (1-2 page)
  4. Statement of teaching philosophy, addressing the applicant’s ability to integrate creative thinking and global perspectives into their courses (1-2 pages)

Application Procedure:                                                                                                                

All required documents, except the recommendation letters, should be combined in a single PDF and be submitted via email to Professor SAITŌ Fumitoshi, Dean of the Graduate School of Humanities: hum_sou@adm.nagoya-u.ac.jp . Indicate “JACS Associate Professor Position” in the subject line of the email.

   Each of the recommendation letters must be submitted by the recommender via email to Professor SAITŌ Fumitoshi, Dean of the Graduate School of Humanities: hum_sou@adm.nagoya-u.ac.jp . Indicate “Recommendation Letter (candidate’s name): JACS Associate Professor Position” in the subject line of the email.

   Please note that incomplete applications will not be considered.

   Nagoya University is an equal opportunity employer. Applications from members of groups underrepresented in higher education are strongly encouraged.

http://en.nagoya-u.ac.jp/about_nu/declaration/positive/index.html

Application deadline: May 9, 2021

Contact: Dr. Kristina Iwata-Weickgenannt, Japan-in-Asia Cultural Studies Program, Graduate School of Humanities, Nagoya University. Email: kristina.iwata@nagoya-u.jp

 

For more information see:

http://www.nagoya-u.ac.jp/en/

http://www.hum.nagoya-u.ac.jp/en/g30/japan-in-asia-program/

https://admissions.g30.nagoya-u.ac.jp/undergraduate/asia_cultural/

日本史研究703号(2021年3月)

日本史研究703号(2021年3月) published on

2020年度日本史研究会大会特集号

大会テーマ 「転換期」における日本史研究

共同研究報告
古代史部会

平安貴族社会における文化的規範意識の変容 樋笠逸人

中世史部会

鎌倉期の荘園制と複合的荘域 前田英之

近世史部会

「長崎御番」と幕藩関係
  ―綱吉政権期を中心に―
松尾晋一
宝永正徳期の幕薩琉関係 木土博成

近現代史部会

戦前日本の漁業発展と水産資源
  ―トロール・機船底曳網漁業を中心に―
山口明日香
近代日本における資源利用の相克と地域社会
  ―温泉資源を事例に―
高柳友彦
コメント 中西 聡


部会・会活動・委員会ニュース

新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論を批判する日本の研究者・アクティビストの緊急声明

新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論を批判する日本の研究者・アクティビストの緊急声明 published on

 2020年12月、ハーバード大学ロースクール教授のジョン・マーク・ラムザイヤー氏が書いた論文「太平洋戦争における性行為契約」が、国際的な学術誌『インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス』(IRLE)のオンライン版に掲載されました。2021年1月31日に、『産経新聞』がこの論文を「「慰安婦=性奴隷」説否定」との見出しで大きくとりあげたことをきっかけに、ラムザイヤー氏とその主張が日本、韓国そして世界で一挙に注目を集めることになりました。
 タイトルとは異なり、この論文は太平洋戦争より前に日本や朝鮮で展開されていた公娼制度に多くの紙幅を割いています。実質的な人身売買だった芸娼妓契約について、ゲーム理論を単純に当てはめ、金額や期間などの条件で、業者と芸娼妓の二者間の思惑が合致した結果であるかのように解釈しています。ラムザイヤー氏は、この解釈をそのまま日本軍「慰安婦」制度に応用しました。戦場のリスクを反映して金額や期間が変わった程度で、基本的には同じように朝鮮人「慰安婦」と業者のあいだで合意された契約関係として理解できると主張したのです。しかも、その議論とワンセットのものとして、朝鮮内の募集業者が女性をだましたことはあっても、政府や軍には問題がなかったと、日本の国家責任を否認する主張も展開しました。
 つまり、この論文は、「慰安婦」を公娼と同一視したうえで、公娼は人身売買されていたのではなく、業者と利害合致のうえで契約を結んだことにして、「慰安婦」被害と日本の責任をなかったことにしようとしているのです。
 私たちは、この論文が専門家の査読をすり抜けて学術誌に掲載されたことに、驚きを禁じ得ません。おそらく日本近代史の専門家によるチェックを受けていなかったのだと思われますが、先行研究が無視されているだけでなく、多くの日本語文献が参照されているわりに、その扱いが恣意的であるうえに、肝心の箇所では根拠が提示されずに主張だけが展開されているという問題があります。以下、主要な問題点を3つに分けて指摘します。
①まず日本軍「慰安婦」制度は公娼制度と深く関係してはいますが、同じではありません。公娼制度とは異なり、慰安所は日本軍が自ら指示・命令して設置・管理し、「慰安婦」も日本軍が直接、または指示・命令して徴募しました。娼妓や芸妓・酌婦だった女性たちが「慰安婦」にさせられた事例は、主に日本人の場合に一部見られたものの、多くの女性は、公娼制度とは関係なく、契約書もないままに、詐欺や暴力や人身売買で「慰安婦」にさせられたことが、膨大な研究から明らかになっています。にもかかわらず、ラムザイヤー氏は日本軍の主体的な関与を示す数々の史料の存在を無視しました。
 何よりも氏は、自らの論点にとって必要不可欠であるはずの業者と朝鮮人「慰安婦」の契約書を1点も示していません。こうした根拠不在の主張だけでなく、随所で史料のなかから自説に都合のよい部分のみを使用しています。たとえば、この論文(6頁)で用いられている米戦時情報局の文書(1944年)には、703人の朝鮮人「慰安婦」が、どのような仕事をさせられるかも知らされずに数百円で誘拐ないし人身売買によりビルマに連れて行かれたことを示す記述がありますが、氏はこれを全く無視しています。
②近代日本の公娼制度の理解にも大きな問題があります。公娼制度下での芸娼妓契約が、実態としては人身売買であり、廃業の自由もなかったことは、既に多数の先行研究と史料で示されています。しかしラムザイヤー氏は、ここでも文献の恣意的使用によって、あるいは根拠も示さずに、娼妓やからゆきさんを自由な契約主体のように論じています。たとえば、この論文(4頁)では『サンダカン八番娼館』を参照し、「おサキさん」が兄によって業者に売られたことについて、業者はだまそうとしていなかったとか、彼女が10歳でも仕事の内容は理解していたなどと主張しています。しかしラムザイヤー氏は、彼女が親方に「嘘つき!」と抗議したことなど、同書に氏の主張をくつがえす内容が記されていることを無視しています。
③この論文は、そもそも女性の人権という観点や、女性たちを束縛していた家父長制の権力という観点が欠落しています。女性たちの居住、外出、廃業の自由や、性行為を拒否する自由などが欠如していたという意味で、日本軍「慰安婦」制度は、そして公娼制度も性奴隷制だったという研究蓄積がありますが、そのことが無視されています。法と経済の重なる領域を扱う学術誌の論文であるにもかかわらず、当時の国内法(刑法)、国際法(人道に対する罪、奴隷条約、ハーグ陸戦条約、強制労働条約、女性・児童売買禁止条約等)に違反する行為について真摯な検討が加えられた形跡もありません。
 以上の理由から、私たちはラムザイヤー氏のこの論文に学術的価値を認めることができません。
 それだけではなく、私たちはこの論文の波及効果にも深刻な懸念をもっています。日本の国家責任を全て免除したうえで、末端の業者と当事者女性の二者関係だけで説明しているからこそ、この論文は、一研究者の著述であることをこえて、日本の加害責任を否定したいと欲している人々に歓迎されました。「慰安婦は公娼だった」「慰安婦は自発的な売春婦」「慰安婦は高収入」「慰安婦は性奴隷ではない」……。これらは、1990年代後半から現在まで、日本や韓国などの「慰安婦」被害否定論者たちによって繰り返し主張されてきた言説です。今回、米国の著名大学の日本通の学者が、同様の主張を英字誌に出したことで、その権威を利用して否定論が新たな装いで再び勢いづくことになりました。それとともに、この論文の主張に対する批判を「反日」などと言って攻撃するなど、「嫌韓」や排外主義に根ざした動きが日本社会で再活発化しています。私たちは、このことを深く憂慮しています。
 以上を踏まえ、私たちはまずIRLEに対し、この論文をしかるべき査読体制によって再審査したうえで、掲載を撤回するよう求めます。また、日本で再び広められてしまった否定論に対して、私たちは事実と歴史的正義にもとづき対抗していきます。今回の否定論は、日本、韓国、北米など、国境をこえて展開しています。であればこそ私たちは、新たな装いで現れた日本軍「慰安婦」否定論に、国境と言語をこえた連帯によって対処していきたいと考えています。

2021年3月10日
Fight for Justice(日本軍「慰安婦」問題webサイト制作委員会)
歴史学研究会
歴史科学協議会
歴史教育者協議会

2021年3月13日
日本史研究会